2005年11月22日

吾妻ひでお「失踪日記」

〜明日の分も書き込み〜

全く懐かしくないくらい最近の作品なのだが、あまりに面白いので書いてしまおう。吾妻ひでおといえば、「ふたりと5人」か「不条理日記」くらいが思いつくのだが、別に覚えているくらいでしかなかった。(後は可愛い女の子のあのタッチの絵)吾妻ひでおが失踪してホームレスしていたというのはTVで誰かが話しているのを聞いた覚えがあったのだが、それが漫画になったのがこれかぁ!と開けて読んだら、ものすごく秀作。速攻買ってしまった。コマは昔風に四角くコマ分けされているのだが絵も丁寧に書かれていて、時々大きなコマに書かれている姿があまりに悲哀。実体験をそのまま書くと悲惨なのか、明るくギャグ的に描いているのだが、よくよく読むとかなり悲惨というか追いつめられたという状況が読み取れていく。ホームレスへなっていく様、拾われて配管工になった体験、漫画を描いていた頃の自伝、アル中になり強制入院された話などである。(タイトル書いただけでも悲惨に感じそう)漫画を描いていた頃の自伝漫画の所はあまり面白くないが、どうして失踪したのかという原因が見えてくる所でもある。欝と燃え尽き症候群なんだな、きっと。原稿を落として失踪してしまうのだが、締め切りに追われる生活はストレス生活そのものだろう。(一日16Pのノルマなんで非人間的である)編集者や会社がやくざの胴元みたいに見えてくる位(大有名以外の漫画家は下っ端の使い捨て?)だ。人間そう簡単にホームレスになじむんだろうか?という疑問は読んでいるうちに払拭されてしまう。アル中になりすまし精神病棟へ入院してルポを書いた本とかあったが、そんな偽ではなく実際の体験というのは内容として濃いものである。文であれこれ書かなくても、古くなって糸を引くお弁当を食べる、朝起きたら雪の中・・それだけで物語は成立する、漫画ならではの効果である。あれこれ架空で描く漫画よりかなり読み応えが出てしまっているというのが妙である。そして作者はホームレスから声をかけられて配管工になるのだが(失踪途中捜索願いで家に戻ったりもする)、配管工での生活中に社内報で漫画を投稿してしまうというのは根っからの漫画家根性を持っているのだろう。がなぜか読んでいると、漫画を描くより配管工している方が幸せなんじゃないかと思えていく。時間を区切って働く方が年がら年中締め切りに追いかけられないし(何かを発表することは批評非難されることにもつながるわけだし)、仕事中はアルコールも飲めないから健康的だ。しかし作者また漫画界へ戻っていき、とうとうアル中状態で妄想が起こり入院してしまうのである。
前半のホームレス状態の話の方が読みやすいのは、話の背景が分からなくてもホームレスの生活が普通に予想しやすいからだろう。後半のアル中、入院日記は漫画だけでは不足分があるから知らない人には何か分からないコマがある。アルコール依存症は病気で「底つき」状態になった時に病院や治療が始まったりする。まずはアルコールを抜き(作者はまず入院させられ縛られる)、それから回復(完治じゃない)プログラムが(入院での生活プログラムを作者は描いている)始まるのである。回復であって完治ではない、作者も漫画で描いているが一度アル中になったら完治はない、回復作業(断酒して生活できるようになる)のである。そして作者は変な会合に連れていかれるのだが、これはアルコール依存社の会で一人ではまた飲酒してしまう誘惑に負けてしまうことがあるので、次回の会合で飲んでいませんと皆の前で言えるように次回の会合まで頑張って禁酒するというモチベーションを持たせるためである。「神様・・・」とかいうお祈りみたいな制約みたいな文言がセリフで出てくるが、これは外国での誓約というかアルコール依存社のための言葉の翻訳である。そのまんま直訳して入ってきているので変な祈りみたいにしか聞こえない(もう少し日本人になじめる文言にした方がいい気がするが)。そういった所へ訳の分からない作者がドンドン放り込まれて「・・・」という状態が描かれているのがまた面白い。
ちなみに自分はアルコールはなくても生きていけるがお菓子がないと大変かもしれない。
最後にアルコール依存のKASTというテストを書いてみる、心当たりはあるだろうか?
1.酒が原因で大切な人との人間関係にひびが入ったことがある。
2.せめて今日だけは酒を飲まないと思っていても、つい飲み過ぎてしまうことが多い。
3.周囲の人から大酒飲みと非難されたことがある。
4.適量で止めようと思っても、つい酔いつぶれるまで飲んでしまう。
5.酒を飲んだ翌朝に、前夜のことをところどころお思い出せないことがしばしばある。
6.休日にはいつもほとんど朝から酒を飲む。
7.二日酔いで仕事を休んだり、大事な約束を守らなかったりしたことがある。
8.糖尿病、肝臓病、または心臓病を診断されたりその治療をうけたことがある。
9.酒が切れた時に汗が出たり、手がふるえたり、いらいらや不眠など苦しいことがある。
10.商売や仕事上の必要で飲む。
11.酒を飲まないと寝つけないことが多い。
12.ほとんど毎日3合以上の晩酌をしている。
13.酒の失敗で警察のやっかいになったことがある。
14.酔うといつも怒りっぽくなる。
            (採点方法は省略)

吾妻氏が再びはまらないことを祈りたい。

作品度    ☆★★★★

少女趣味度  なし

懐かしみ度  なし

   

  読むと考えさせられる書物
      

  上のテストで不安な方
   
   
posted by ぷりん at 21:34| Comment(1) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして!雑誌・TVを中心にブログを書いています。「失踪日記」の記事を書き、検索でこちらのサイトを拝見しました。TBよろしくお願いいたします。
Posted by A・C・O at 2005年11月28日 21:31
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